――まずは、今作を作るにあたってのテーマから教えて下さい。
幸樹:今までのアルバムを見たり聴いたりしてて、今回はどっちかっていうと、より深く偏らせる感じにしたいねっていうスタートではありました。
――普通なら、聴きやすさに重点を置きそうなものですが、敢えて、深く偏らせるとは面白い発想ですね?
幸樹:曲は違えど良くも悪くも綺麗だったので、そこを汚すような感じにしてみてもいいんじゃないかなと思って。だから、アー写もそうなんですけど、アートディレクターを入れたり、ヴィジュアル系を撮影していないカメラマンに撮ってもらったり。そうやって、ヴィジュアル系の枠では収まらないようなテイストをプラスの要素として出したかったので、そうした思いがちゃんと具現化できたなと感じてます。
――活動歴が長くなってもマンネリ化しないというか、ダウトの良さは常に斬新さを求めているところにありますよね。
幸樹:今は、回りまわってというところだと思うんですよね。原点じゃないけど、自分たちの唯一無二とは何だろうって改めて考えたとき、辿り着いたのが今だったんだと思います。
――今作は、全ての作詞を幸樹さんが担当し、作曲はメンバーそれぞれが手掛けているだけに、聴き応えがありました。1曲目の「礼拝」、そしてリード曲となっている「曼陀羅A(読み方:まんだらエース)」ですが、この曲で重点に置いたことは何だったのでしょう?
ひヵる:元々、『曼陀羅A』っていう言葉自体は幸樹から先に聞いていたんで、その文字とイメージを自分なりに解釈して作ろうって思ったのが、リード曲の「曼陀羅A」なんです。短い時間の中でどれだけ濃さを出せるかっていうのは重点に置いた部分でもありましたね。
――なるほど。それにしても、「曼陀羅A」という言葉が浮かんできた背景も気になりますよ。
幸樹:47都道府県フリーライブツアーを廻るということも関係してるんですけど、より深く潜りたい時期だったんだと思います。あとは、この作品を引っ提げてツアーを廻ると考えたときに、ダウト活動13年というのも相まって、結局は、音楽で説得できないといけないなって。悪く聞こえるかもしれないんですけど、ファンとの距離を近くするのではなく、敢えて遠くしてみたと思ってます。
――どちらかというと、ダウトは親しみやすい印象のバンドなので、距離を遠くしたというのも具体的な狙いがあってのことですよね?
幸樹:距離が近いと曲の印象って変わってくると思うんです。でも、今回は、遠い距離でも曲だけで刺さってほしいなって。
――そういった意図があったのですね。これからのダウトの印象をガラリと変えてくれる曲になりそうです。次の「不夜城」は、威吹さん作曲ですが。
威吹:この曲は、前に先行で動画配信をしたんですけど、ダウトらしいキャッチーさに加えて中華的な音の要素も入っているので、新しい挑戦ではありました。
――和の曲調を主体にしてきたバンドにも関わらず、中華的な音が意外と馴染んでるんですよね。
威吹:そうですね。実際、ここまで馴染むとは思ってなかったです。この曲を作るにあたって、中国の音楽を色々と聴き漁ったんです。中にはコミカルなものもあったので、どういった雰囲気を活かすのかは結構悩みましたね。
直人:(幸樹に向かって唐突に)買ってよ。
幸樹:何を?銅鑼?
直人:銅鑼、買ってよ。
幸樹:自分で買って(笑)。
威吹:でも、これからのツアーでも伸びる曲だと思います。
――「KAIGAN」も同じことが言えるのではないでしょうか。作曲者である玲夏さんから見て、この曲の魅力はどこにありますか?
玲夏:あまり考えずに作った曲の1つなので、敢えて魅力を言うなら、狙って作ろうとしてなかったところですかね。アルバムだけに、こうやって色んな曲が混じってくると、人の曲の対して自分はどうアプローチするかっていうところに集中しちゃって。逆に、自分の作った曲はメンバーにお任せっていう感じではあるので、良い意味で自分の曲ほど思い入れが少ないんですよね。なので、実際のところ、曲の魅力っていうと、自分が作った曲ではあるけれど、僕自身がよくわかってないです(笑)。
幸樹:この曲のこだわりとしては、歌詞を敢えて改行していないところですね。あとは、メロディが良い上に楽曲がかっこいいから、ライヴでもすごく楽しみですよね。
――良い意味で予想を裏切る曲が続きます。「私生活」はタイトルから想像するとバラード曲なのかなと思いきや、実はすごいことを歌っている曲でもあって。
幸樹:ひヵるさんの幼少期の頃を描いてみました。
ひヵる:いやいや、全く違います。ヤバいでしょ、こんなんだったら(笑)。
――だいぶバイオレンスな世界ですよ(笑)。
ひヵる:怖い、怖い(笑)。ちなみに、作り始めたときは『曼陀羅A』とは関係ない頭で作ろうと思ったんですよ。というのも、アルバムのワードに引っ張られすぎると曲ができなくなるなと思って。それで、洋風な映画のイメージで曲を作ったつもりではいたんですけど、歌詞が乗ったことにより、和風の生々しい映画になったなと。
――そういう変化も曲を作る上での面白さですよね。対して、「輝夜に満ちて勿忘草」はどこまでも美しい描写が印象的です。
威吹:曲自体は、アルバム制作の前からできていたもので。それで、このアルバムを作るにあたり、フル尺にして、更にアレンジを加えて完成させていったという感じですね。僕は基本的に、曲が通らなかったら温めるのではなくて破棄してしまうタイプなんですけど、この曲は捨てたくなかったんですよね。きっと、自分で気に入っていたんだと思います。最初はバラード調なのかなという印象を受けると思うんですけど、いきなりノリが良くなったり、いきなり止まったりっていうように、曲に対する人間臭さを出したいなと思っていたので、こうした形になって良かったです。
――この後に「閃光花火」と「金魚蜂」を持ってくるあたり、アルバムとして聴かせてくるなと思いました。
幸樹:「輝夜に満ちて勿忘草」からうまく繋がったなと思うんですよ、「閃光花火」は。ただ、「金魚蜂」も同じように既存の曲ではあるので、どうフレッシュにやれるかというのはものすごく大事だと思っています。正直、演奏する側としては飽きてるんですよ。飽きてない?
玲夏:うん。
――正直でいいです(笑)。でも、これから始まる47ツアーで披露するではないですか。どうやったら新鮮な気持ちで取り組めると考えますか?
玲夏:ただ、飽きたといっても、曲に飽きてしまったというわけではなくて、1ツアー廻ってある程度の成長が見えている曲なので、今回のフリーライヴを向けて、あとはもう何かアレンジするしかないのかなって。
幸樹:ガラリと変えるというわけではないにせよ、ちょっと変化は入れたいなと思うんですよ。ただただ曲を再現するだけじゃつまらない。
直人:でも、最近、三味線弾き出したでしょ。
幸樹:あぁ、まぁそうだね。あとは、「金魚蜂」で生のブラスを入れたら絶対面白そうだし。そうやって色々と考えているんですけど、アルバムに入れたからには、きちんと意味を持たせてライヴで提示したいなとは思います。
――そして、アルバム後半に進むにつれて楽曲は激しさを増していきます。
幸樹:曲順はメンバーと一緒に決めていったんですけど、それぞれが必然的な立ち位置に並んだなと思います。
――「狂喜乱舞」は、タイトルどおりの曲に仕上がりましたね?
幸樹:そうですね。一見、お祭りソングのように聴こえるかもしれないんですけど、僕の中ではスネアを結構抜いたのがデカくて。そのおかげで、ディスコミュージックのような雰囲気も感じてもらえると思います。あとは、この曲にも銅鑼が入っているんですよね。
直人:ははは(笑)。でも、ドラムと同時に鳴ってるでしょ。それだとライヴで叩けないかな。
――何だか、うまく逃げられたような(笑)。次の「失神」は、ライヴでの盛り上がり曲でもありますね?
幸樹:ライヴでは披露していたんですけど、音源化していなかった曲なんです。だから、音源化を喜んでくれるファンの人もたくさん居ましたね。
――「般若」も、実にインパクトのある曲ですね?
玲夏:この時代だからこそ、敢えてループが入るような曲を入れたいって幸樹が言ってて。で、それをできそうなのはこの曲だと思ったので、そういう立ち位置に持っていきました。
――「この時代だからこそ」というのは、どのような真意があって言ったことなんですか?
幸樹:ライヴで煽り曲をやれば当然のようにファンは喜んでくれる。そこに頼ってばかりではいけないなって思いながらも、今のこの状況でループする煽り曲っていうものを出しても良いと思ったんですよね。そもそも、時代を考えて曲を作ること自体がナンセンスだなと。
――曲と歌詞、どちらも反骨精神に溢れているなと思いました。だからこそ、この時代でなければできなかった曲に聴こえましたよ。
幸樹:般若心経というのは、嫉妬や憤怒という意味合いがあるんです。だから、そういうハマりも良かったですね。
――アルバムのラストを飾るのは、直人さん作曲の「ドラマチックパレード」ですが、先程までの激しさとは打って変わって、爽やかさが目立ちますね?
直人:初めてライヴを意識して手応えのあった曲なんですけど、このアルバムをワールドワイドな作品と捉えるなら、アメリカの西海岸的な気持ちではあります。
――最後の最後でガラッと雰囲気を変えてくるとは、予想もしませんでしたよ。
幸樹:この曲だけね。
直人:そうだね。
――それ故に、今後のダウトの方向性を裏付ける曲でもあるのかなと?
直人:確かに、アルバムの中では異色ですよね。けど、ライヴで何回か披露している上で言えるのは、みんなが自然と笑顔になれる曲だなって。なので、方向性とかは関係なく、良い感じの曲だなっていうぐらいに思ってもらえれば。
――音楽を好きな人が作ったんだろうなって思える曲です。
直人:あ、出てますか(笑)。
――結局のところ、アルバムで新しい世界観をしっかりと提示しながらも、やっぱりダウトの曲は単純に良いねっていうのが再確認できました。
直人:そういう立ち位置の曲にツアーでもなればいいなと思いますけどね。
――そして、アルバム発売後にはツアーが始まります。今回は47都道府県ツアーという長丁場でありながら、フリーライヴというだけあって期待値が高まりますよ。
幸樹:今回、ライヴを動画で撮れる時間も設けようと思ってるんです。こういったことって日本では珍しく見られるんですけど、海外では主流なんですよね。撮ることに慣れていない人もいるとは思うんですけど、せっかくのフリーライヴなんで新しいことは取り入れていきたいし、それによってダウトのことが世の中に広まっていたら良いなって感じです。
――ほんと、あくなき挑戦精神ですね。
幸樹:47ツアーが終わった後にはDaizyStripperとのツーマンも決まっているので、どんどんいこうかなと。やっぱり、良いバンドと共演できるとこっちも刺激をもらえますからね。
――ところで、そこまで果敢に攻められるのは、やはりバンドが好きだからできることなのでしょうか?
威吹:いうなれば、常にチャレンジはしていきたいんですよ。やりたいこともたくさんありますし、メンバー全員が同じ気持ちなんですよね。そこはダウトの強みなのかなと思います。もうすぐ活動13年目を迎えますけど、結成したときよりも気持ちは上がっていると思います。
ひヵる:音楽をやりたいと思う以上、もっと良くなっていきたいという気持ちが常にあって。だから、今は俺たちかっこいいんだぜっていうのをみんなに伝えたい。その気合いや熱意を、まずは47都道府県ツアーで届けたいですね。
Interview:ERI MIZUTANI
