2018年9月25日火曜日
2018.10月号 Soan project
──新作がリリースされますが、作品タイトルを付けたのは手鞠さんだそうですね?
手鞠:はい。これまでのリリースを含め全部で6タイトルですから、そう思うと本当に多いですよね(笑)。
──「共奏」と「狂想」だけで言うならば、同じ読み方でも異なる意味を持ってくるなど言葉遊びをふんだんに盛り込んでくるところが面白いです。
手鞠:言葉遊びとしての当て字や造語ではあるんですけど、その辺は自由に操っていいんじゃないかなという部分があって。何か、知っている言葉だけだとそこだけで終わってしまうのもなぁって。全く新しい言葉を作ってしまってそこからこれってどういう意味なんだろうっていう風に考えてもらってもいいと思うので、柔軟性に富むというか言葉に縛られるのはやめようと思ったんです。Soanプロジェクトwith手鞠に関して言えばすごく自由にやらせてもらっているので自分なりの自由というのを解釈した上でのタイトルというところはありますね。ただ、それでも一定のロジックというのはあって。これまでの作品で静と動というのを分けて対比的に言葉を選んできたりするので、やっぱりロジックがあって完成に行き着いているという感じはありますね。ヴィジュアル系って何でもやっていいってとらわれがちだけど、一定の美学やロジックがあることによって自分が理想としているヴィジュアル系が描けるというか。自分たちが信じるヴィジュアル系の極端な部分というのがSoanプロジェクトwith手鞠では出せていると思っています。
──ブレることなくここまできましたからね。
手鞠:そうですね。芯がしっかりとしているというよりかは我が強いのかもしれないけど(笑)、人の良し悪しに左右されずに出来た感じはあります。だからこそ、Soanさんがプロジェクトを立ち上げて一緒にアイデアを出し合っていく中で、これは完全にSoanさんの言っていることについていけば楽しめるって思ったんです。それはSoanさんが僕の良い部分を理解してくれているというのもあるし、ここが自分に与えられているフィールドなんだろうなって感じたので安心して好きに楽しむことが出来ました。
──それはSoanさんの懐の大きさもあるのではないですか?
Soan:そうなんですかね。俺からすると逆でもあるんですよ。というのも、手鞠くんでないとこの静の世界観というのは100%実現は出来なかった。それはプロジェクトを立ち上げた当初から感じてはいたんですけど、改めて手鞠くんがいなかったら出来なかった音遊びではあるなと実感していますね。
手鞠:3部作を通して改めて言えるのは、Soanプロジェクトの生を担うのであればやっぱり僕しかいなかったんだろうなって。もちろん、僕なんかより遥かに歌のうまい人はたくさんいるし、Soanさんの人脈の中で歌える人というのは多くいるだろうけど、単純に技術だけではこのプロジェクトはできないんじゃないかと。そう思うと、芥くんのように歌に想いや温度を乗せられる歌心のある人というのは今のシーンにおいて希有だと思うんです。でも、芥くんにはSoanプロジェクトwith手鞠はできない。ヴォーカリストとしてというなら意味合いが変わってくるんですけど、Soanプロジェクトwith手鞠は僕の人生観が出ているものなので、このシーンの中でも僕にしか出来ないものなんじゃないかなって思うんです。だからこそ当然、芥君の優しさと強さが込められたwith芥を僕では担えない。なるべくして僕ら二人はそれぞれを担っている。いや、Soanさんがそれぞれの持ち味を見抜いて適材適所に采配してくれてるわけです。
──本作も手鞠さんにしか出せない色がたくさん出ていますからね。また、そうした手鞠さんの魅力を引き出したSoanさんの力も大きいですよ。
Soan:それはもう、手鞠くんを始め、タイゾ、祐弥、Sachi、ライブでは健希というメンバーに恵まれたからだと思います。このメンバーじゃなきゃできないということが出来たので、何て贅沢なことが出来たんだと思います。
──1曲目の「落下の挙動、加速、暗転、反射 そして調和する僕と君と。」は手鞠さんから見てどのような曲といえましょう?
手鞠:収録曲の中では割と最近出来た曲なんです。このタイミングで出せる曲だからこういうことやってみようという部分において、サビにSoanプロジェクトwith手鞠のメンバーが在籍している、或いは在籍していたバンドのイメージを全てを入れているんです。そういうところに気付いてもらうのも良いんじゃないかなと。優しさと厳しさの調和と、メンバー全員への敬意やリスペクトというのがすごく込められていると思います。Aメロとか聴き手に投げかけてはいるけれど、レスポンスを聞くつもりはないというか。
──あくまで答えは聞いていないと。
手鞠:会話するつもりはないという点では、エゴイスティックなんですよね(笑)。でも、そういう部分においては芥くんの歌詞とはまた違った感じになっていると思うんです。それは環境の中で養われてきた部分があるのかなと。そういった表情付けというのがこの曲では出ていると思います。
──「春色の音色、記憶回廊」は、お二人から見ていかがですか?
Soan:この曲を初披露したのはロリータの格好をしてライヴをした時でしたね。
手鞠:まさかそこで新曲を披露するとは(笑)。
Soan:確かに、ギャップはあったよね(笑)。
手鞠:春をテーマに描いた曲ということもあって、本作の中では最も柔らかい曲になっていると思います。ピアノの繊細な感じや奥ゆかしさに乗って、まるで短編映画を観ているかのような表情豊かなものになりました。
Soan:元々、手鞠くんに春というテーマを伝えているのと同時に卒業もテーマとしていたので、学校の卒業式で歌ってもらいたいという気持ちはあります。それを考えてハモリのメロディラインを作っていったんですよね。ここでは祐弥が手鞠くんに合わせて良い声で歌ってくれたんですけど、俺の中では体育館のような広いところで生徒たちがパートに分かれて歌っているというイメージはありました。なので、やってくれないかなぁって。
──実現したら素敵ですよね。続いては「黄昏色に融解する視界と屈折した類推(アナロジー)」です。
手鞠:イメージでいうと、まるで重油のバスタブの中に浸かっているような。そうした心や空間の重々しさ、不条理とやるせなさみたいな心象を夕日の情景に重ねていたんですけど、そんな状況な中でも救いを見い出そうとするところを描ければいいなと思っていたので、一定の悟りであったり諦めであったりを滲ませているので、その点を考えると負の感情ではありますよね。他の曲に関してもそうですけど、僕が描く歌詞で気を付けているのは人間の感情とそれを取り巻く環境や情景を描く部分のバランスなんです。シチュエーションを細やかに描写することで物語の説得力であったり裏付けをするというのを心掛けています。その感じがこの曲ではわかりやすいんじゃないですかね。
Soan:手鞠君が凄く良い形で情景や時というものを描いてくれるおかげで、より明確に楽曲の順番や自身の想いがリンクします。その上で、この曲を3曲目に置いた理由としてドラムが入っていないというのが挙げられるんです。あとは、タイトルも大きく関わっていますね。1曲目がモーニングだとするならば2曲目は春の温かい感じで昼間を表わしていて、3曲目では黄昏色ということもあり夕方なんです。このあと、曲はミッドナイトへ入っていくんですけど、時系列でこの曲を3曲目に持ってきたというのもポイントではあります。あと、この曲では祐弥がニ胡を演奏しているんです。ヴィジュアルシーンで二胡を弾いているアーティストっていないと思うんですよね。
──確かに、二胡が合う楽曲というのはヴィジュアルシーンで見たことはありません。随分と画期的な挑戦ですね?
Soan:祐弥がスタジオに二胡を持ってきたのをきっかけにこの曲は生まれたようなものなんですよ。多分、バイオリンのさっちゃんに見せるために持ってきていたと思うんですけど、良い偶然ではありましたね。
──それがプロジェクトの面白さではありませんか?
Soan:そうなんですよ。バンドってどちらかというと、何でこういうことがやれないかという考えに行きがちなんですけど、このプロジェクトは面白いことがあるならどんどん取り込んでいこうという主義なので。今もライヴで二胡はガンガン弾いているんですけど、他の音と合わせて良い具合になっていますよ。おかげで、俺としてもすごく心地の良い空間が出来上がっています。
──そしてここから先、曲が描く時間は深まっていくのですね。
Soan:はい。夜から深夜へと移り変わります。
──まず「醜悪なる獣穿つ矢、致死を以て野卑を屠る」からお話を聞かせて下さい。
Soan:はい。先程、曲順を時系列として挙げましたけど、手鞠くんにこの曲で夜の深さを表わしてほしいとは言っていなかったんです。曲の置き方が最終的にそうだっただけで。
手鞠:この曲に関しては初めからSoanさんに手鞠くんの本質的な部分を出してほしいと言われていたんです。その時点でSoanプロジェクトの青写真というか、それぞれがそれぞれの表現を作り出していって最終的にそれらが交わっていくビジョンというのがSoanさんの中にあったので、それを目指していくための曲だったと思うんですよ。Soanプロジェクトwith手鞠、Soanプロジェクトwith芥という両極端なものをやりつつも、その2つが様々な経緯の先でまた重なり合うという部分での必要な曲としてSoanさんが書いたと思うので、その中で1番攻撃的というか、核となるものを描きたくて。リスナーとの距離感というのをアーティストとして取りたいというのが僕の中にあって。一定の距離感を持ってこそ両者は成り立っていると思っているので、アーティストはリスナーと友達ではなくあくまで高嶺の花のような存在であるべきだと思うんです。だからこそ手と手が触れないよう、こちらの温度が伝わらないようなイメージで描いていった曲ではありますね。同時に、アーティストとしてこうありたいという僕の理想が出ていると思います。哲学といったらおこがましいかもしれないけれど、そこをうまく描けたらいいなぁと。聴き手によっては突き放されているような感覚に陥るかもしれないけど、Soanプロジェクトを好きでいてくれるお客さんにはこのメッセージは伝わると思っています。
──この曲はMVにもなっていますね?
手鞠:この曲を発信することに意味がある、そうした想いからMVを撮ったんです。これこそ、Soanプロジェクトwith手鞠でなければ出来なかったことだと思います。
──次の「吐情、舌上、熱帯夜」に関してはいかがですか?
手鞠:今回、全体を通してすごく手応えがあるんですけど、楽曲としてはこれが1番好きかもというぐらいに気に入っています。これは確か、収録曲の中で1番最後に出来た曲ですよね?
Soan:そう、1番最後だね。
手鞠:最初に聴いたとき、すごくお洒落で、バンドとしてのグルーヴ感もめちゃくちゃ活きているし、アレンジに関してもすごく遊べる曲だなと思ったんです。その分、歌詞を書く上では悩みましたね。新しいことを試したい、今まで自分がやってこなかったことを楽しみたいと思うからこそ、すごく細部にこだわったというか。歌詞の描き方には自分のルールやロジックがあるんですけど、そこに更に韻を踏みつつ、歌う中でリズムに言葉が乗ってくる分、言語を圧縮しなくちゃいけないんですよね。そのときに発音や言葉尻がどういう風に聴こえるか。例えば、単語を選ぶにしても発音によってカ行だったりタ行だったり聴こえ方が違うじゃないですか。カ行だとこのリズムに乗ったときに言葉が尖りすぎるからカ行の言葉は使えない。そうなると、サ行の方がこのリズムに乗ったときに綺麗に聴こえるからサ行で同じ意味の表現を探さなきゃいけないっていう作業をやっていったので、言葉のパズルが大変でした。でも、日本語の良いところだと思うんですけど、意味が同じであれば言葉を置き換えられるじゃないですか。だから、いくつも言葉の候補を出して歌いながら1番発音したときにリズムにマッチする言葉というのを選んでいったんです。それをこだわっただけあって、レコーディングで歌ったときにすごく心地いいというか。そこは自分の中で新しい挑戦が形になったなとい思います。
──手鞠さんのレコーディングにはSoanさんも立ち会ったのですか?
Soan:もちろん、手鞠くんのレコーディングにも立ち会いましたね。でも、この言葉遊びが出来るのは手鞠くんならではだなと思います。こっちが提示した以上のものが返ってきたなと歌詞を読んで思いましたから。
──作品のラストは「紫陽花がまた咲く頃に」となっています。「吐情、舌上、熱帯夜」からとても良い流れを見せていますよね?
Soan:そうですね。官能的でもあり情熱的でもある深夜帯からの夜明けというところでは、曲が繋がっていると思います。でも、「吐情、舌上、熱帯夜」で作品が終わりといえば終わりなんですよね、俺の中では。それだけに「紫陽花がまた咲く頃に」はまた別物というか、超特別枠という感じではあります。「吐情、舌上、熱帯夜」で終わることに意味があるというか。ただ、「吐情、舌上、熱帯夜」から「紫陽花がまた咲く頃に」へ繋がるといえばそうなので、3作品目にしてまた面白いチャレンジが出来たので良かったなと思います。
──作品は完結になりますが、この後もライヴの予定が目白押しとなっているんですよね?
Soan:そうですね。やっぱり、生で演奏してなんぼというところはあるので、今回のツアーではそのときその場に合ったものを見せたいとは思っています。でも、まずは9月30日のワンマンを楽しみにしておいてもらえたらなと。始動記念日以外では共演することのなかった2つのプロジェクトが観られる日なので、ここは是非楽しみにしておいてほしいです。
Interview:ERI MIZUTANI
