──Soan プロジェクト with 芥としてリリースした3部作も、本作をもって完結だそうですね?
Soan:もともと、3部作で終わらせようとは思っていなかったんですよ。ただ、やっていく過程で3部作になり、今回で走り抜けるのがベストだと思ったんです。なので、完結した今は充実感と多幸感でいっぱいですね。あと、3rdミニ・アルバム『動猛成る狂想、動脈に射つ。静廉鳴る奏、静脈に宛がう。』を作るにあたって手鞠くんと芥には概論の説明はしたんですけど、思い起こせば1stミニ・アルバム『静謐を制し征する音、慟哭を鼓動として道とする音』は地球生命の誕生を表わしていて、1つの球体が誕生したこと、またメンバーから背中を押されたことによって2ndミニ・アルバム『旋律、静かな願いと。調律、その脈動に問う。』ではそれをもっと大きくしていきたいと思ったんです。そして、プロジェクトの最後となる本作では、2作品を通して作り上げた球体を閉じ込めたいと思ったんです。球体を立方体で覆う感じといいますか。
──球体をより大きく広げることもできたと思います。でも、なぜここで閉じ込めようという発想に至ったのでしょう?
Soan:2ndを作ったとき、芥という地球と手鞠という地球をかなり大きくすることができたなと感じたんです。それがあったので、最後は広げるのではなく綺麗に閉じ込めようと、そうすることによって崩されないで済むと思ったんです。イメージとしては、永久保存ですね。
──そうした想いがあったのですね。それにしても、本作はかなりアグレッシブではないですか?
芥:確かに、そうですね。過去2作品と比べても楽曲が振り切れているように思います。振り幅が広くなったというよりかは、2つの道を経たことで導かれたものがあるというか。何だか、気持ちが振り切ったような感じがするんです。また、本作のタイトルは手鞠くんが付けてくれたんですけど、動脈と静脈って心臓から送り出されてまた心臓に戻っていくという点では、結局、心臓が球体だったんじゃないかなと。それもあって、3部作の完結とはいっても、何かに辿り着いたというよりかは戻っていくというところで、このプロジェクトの本質を表わしているのかもしれないなと思いましたね。
──なるほど。聴いていて、本能のままに音楽を楽しんでいるなと感じましたよ。
Soan:そこに関しては、楽曲を作ってお客さんに披露してから時が経っているのもあったりするのかなと。ライヴで感じたものをそのまま作品に投影できるというのは大きいかもしれないです。
──今回も、サポート・メンバーはお馴染みの面々ですね。音源でライヴの空気感を表現するのはなかなか難しいと思いますが、やはりこのメンバーだからこそできたことではありますか?
Soan:そうですね。それぞれの経験値もあるんでしょうけど、プロジェクトとしてずっと一緒にやってきたからというのもあるし、このメンバーだからこそなんじゃないかなという自信はあります。改めて、良いメンバーだなと思いますよ。
──本作はまず、SE「heart」から始まります。SE始まりにしようと考えたのはなぜですか?
Soan:前作もそうなんですけど、1曲目がSEだったんですね。今回も似たようなアプローチをしたいなと思い、SEから始まって1曲目に一気に爆発させるっていうものを作りたいと思って作りました。なので、SEというよりかは1曲目をトラック分けしたような感じではありますね。序章というか、これからくるドキドキ感を味わってもらいたいなと思います。
──そこから、「濁った瞳」につながっていきます。
Soan:元々、この曲は作ったときに芥を想って書いた曲ではありますね。ただ、それを芥がどう捉えるかというのは当然自由であって。例えば、すごくネガティブなことを歌詞で言うかもしれないし、闇の中に一筋の光が差し込んでいるという情景を作り上げるかもしれない。どういう感じに仕上げるかは芥次第だったのでそこは楽しみではありました。
芥:この曲は魂がこもっていますよね。その分、デカい命題がきたなと(笑)。ただ、書きたいように書いてほしいと言われていたので、そのとおりに、バンドをやっている上で感じたことを素直に書いていきましたね。今願いたいものや欲しかったりするものがしっかりと形になったのかなと思います。
──「meteo trive」は遊び心満載の曲となっていますが、いかがでしょう?
Soan:一言で言うならば、勢い一発みたいなところはあります。それと、この曲はどちらかというと楽器隊の絵が浮かんで作ったんですよね。Shunちゃんのパワーコーラスというかシャウトが割とふんだんに入っているので、本人曰くしんどいと(笑)。でも、今までそんなにやったことのないというのを一気に集約させた曲なので、メンバーに求める挑戦というところはありましたね。
芥:これは2016年の曲なんですけど、「濁った瞳」からうまく流れたなという気がしていて。歌詞は書いていることは多くはないんですけど、僕らアーティストの想うものと自分たちが発したものが届くラグのもどかしさを流れ星になぞらえています。届けたいものが100%伝わるかといったら、全てではないかもしれない。だからこそ、今こうしてやっていられることが自分にとって大きなことだったり、残したものがあなたの胸にずっといてほしいなっていう気持ちだったりを表わしています。
──「朽ち木の行方」も2016年の曲ですね?
Soan:そうです。去年のワンマンからずっとやっている曲なんですけど、サビの突き抜けとBメロの重いラウドなところの対比でどれだけエッジを効かせられるかというのは意識しましたね。
──楽曲を作った当時とライヴを経ての今、この曲への印象は変わりましたか?
Soan:いや、そんなにという感じです。曲を作っていた段階で描いていたものがそのままライヴにつながっているので。ただ、メンバーの動きや芥の歌に対する熱の込め方というのは当然ライヴをやっていくうちに進化しているなと。艶が出てきたというか、楽曲がどんどん生まれ変わっていると思います。それだけに、こうして脂が乗っているときに音源としてパッケージできたことは良かったかなと。
芥:サビの開ける感じというのはSoanプロジェクトwith芥の中でもトップクラスだと思います。
この曲、サビにかけてすごく多幸感があるんですよね。元々、自分の中での表題はギリシャ神話のイカロスだったんです。そこから、自分が何かを目指したり理想を追うためには代償が出てくるというのは無駄なことなのか、ということを書きたくて。あと、AメロとBメロで若干変則感があるんですけど、サビにかけてライヴではお客さんが手を振ってくれるんですね。その瞬間、朽ち木に花が咲くというか、曲が色付きを見せるんです。そのとき、自分がこれまでやってきたことが報われたような感じがするんですよね。
──幸せな1曲ですね。次の「月欺けば傀儡が笑う」も聴き応えのある曲ですね?
Soan:去年8月にSoanプロジェクトwith芥で和装のワンマンをやったんです。そこで持ってきた遊び心のある和な1曲ですね。和のテイストをここまでガッツリとやったことは俺の人生の中でもやったことがなかったので新鮮でした。あと、間奏と扇りがループする曲というのを作りたかったので、この楽曲はライヴでは間奏と扇りが延々とループするバージョンもあるんです。それに関しては、今だからこそ新しいという感じに受け取ってもらえると思います。
──和な曲ということもあって、芥さんの違った一面が覗けました。
芥:いつも自分が出しているキーよりかは低めなこともあって、サビも張り上げて歌ってはいないんですよね。あと、歌詞ではこの時間がいつまでも続くようにということを書いているんですけど、ライヴでもいつもこの時間が続けばいいなと思っているので、願わくは時間を止めてほしいという気持ちの憂いがサビに集約して歌えたのかなと思います。
──続いての「frowery count」は、どういった部分が魅力的といえましょう?
Soan:今、物販でMカードというのを作っていて、初めてSoanプロジェクトとして映像を撮った作品になるんです。元々、この曲ができる前は1stの最後に入っている「hysteria show time」という楽曲がライヴの大ラスで盛り上がるパーティーソングだったんですけど、それを超えたいという気持ちで作ったので、割とお客さん目線でできた楽曲ではありますね。今後のライヴでの定番曲にしていきたいし、何よりもお客さんと一緒にこの曲で騒いで楽しみたいですね(笑)。
芥:「濁った瞳」と同時期にこの曲をもらったんですよ。だから、自分の中ではこのプロジェクトをやっていって今感じている迷いなどを詰め込んだ「濁った瞳」から、すべての答えはここにあったなって感じたのが「frowery count」なんですよね。声をぶつけ合うというイメージのこの曲を聴いて、ほんとそれに尽きるなって。お客さんとの会話って普段だとインストぐらいじゃないですか。でも、ライヴという場で自分が「いけるか!」と発信したらそれに対してお客さんは「oi!」応えてくれる。意志確認という意味でのコールアンドレスポンス、そういった声のぶつかり合いを見ていると、それこそが形に見えない証明なんだなって。それゆえ、この曲を通して「濁った瞳」で書いたときに感じていた迷いが晴れた気がするんです。だからこそ、Soanプロジェクトwith芥の行き着いた1つの答えだと思うし、今後も推していきたい曲ではありますね。
──最後に収録されているのは「紫陽花がまた咲く頃に」となっていますが、紫陽花はSoanさんにとって大切な位置付けの花でもありますよね?
Soan:そうですね。自分の誕生月の花が紫陽花なので。このタイトルは手鞠くんが付けてくれて、歌詞は手鞠くんと芥の合作となっているんです。まず、タイトルを見た瞬間にSoanプロジェクトを総括して書いてくれたんだなということがわかりました。曲自体もプロジェクトとして1つの理想郷に辿り着いたというところを出したくて書いたので、歌詞と楽曲がリンクしているなと。作品だけで見るとエンドロール的な位置付けの曲なんですけど、間違いなく名曲になったと思います。
──どの曲もライヴで映えると思います。9月30日にはSoanプロジェクトとしてワンマンが行われますが、ここではプロジェクト始動記念以外では共演することのなかったwith芥とwith手鞠が揃う貴重な日となりますね?
Soan:はい、そうなんです。秋口にはプロジェクトそれぞれでワンマン・ツアーを廻るんですけけど、まずは9月30日にみんなでより鋭利な刃物になれたらいいなと思っています。
Interview:ERI MIZUTANI
